昨年(平成20年3月)初旬、蘇我のK総合病院で白内障の手術を受けてから早いもので11ヵ月が経ちました。これは前回書きました「眼科手術の記」の後日譚と、その後勉強した老人の眼の病気に関する知識を纏めたものです。

退院後のアフター・ケアー

 退院後、最初の3ヶ月は2週間毎に担当医の診察予約を取ってくれて病院に通うことになりました。術後一番恐ろしいことは感染症に掛かることだそうで、先生はそのことを毎回慎重にチェックして下さいました。その他は毎回特殊な器械で上端右のような眼の細胞の写真を撮り、手術で傷付いた眼の細胞が順調に再生されているかを検査しているということでした。先生の診察前には看護師さんが視力検査をして視力が落ちていないかもチェックして、不測の事態が起こっていないかも確認していました。
 その後の4ヶ月間は、診察の頻度は1か月に1度になりました。この期間は細胞撮影の検査はなくなり、看護師さんによる視力検査の後、先生による簡単な診察がありました。この頃まで1種類の目薬が処方され、1日に2回の点眼が行われました。この期間終了後は担当医による目薬の処方はなくなりましたが、若し眼がショボショボするようなことがありましたら、市販のドライアイ用(コンタクト・レンズをしている人用)の目薬を買って適宜点すと良いとのご指示を受けました。

 その後は3ケ月置いて退院後1年目の最後の診察がありました。この折には前もって瞳孔を開く目薬を点すので自動車に乗らないで来院して下さいと言われていました。この日は例によって看護師さんによる視力検査があり、視力は手術直後のメガネを付けて1.2と変わっていないとの事でした。瞳孔を開く目薬の点滴後30分して、担当医による眼底検査があり、特に異常はないと診断されました。この後は約6ヶ月後頃に適宜予約を取って診察を受けて下さいと言われました。手術で入れた人工眼球の耐用年数を伺いました所、このレンズは一生ものだそうで、ほとんどの場合死ぬまで取り換える必要はないそうです。若し、不測の事態が起こって人工レンズを取り換えなければならなくなったとしますと、この手術はかなり難しいとのことです。

手術から1年後の眼の状況

 手術直後は視野がはっきりと明るくなった感じで、その感じは40ワットの白熱電球の部屋からどちらかと言えば青っぽい100ワットの蛍光灯の部屋に入ったという感じでしたが、1年も経つとそれもすっかり慣れて当たり前のようになりました。
 人工レンズは人間の眼球に比べて弾力性がないので、焦点距離を調整できないとのことです。従って人工レンズを選ぶ場合には焦点距離がどの位のレンズにするか問題になって来ます。通常は新聞や書物を読む時の近距離焦点のレンズを選ぶのが一般的だそうで、小生の場合もそのような焦点のレンズが入れられたそうです。
 
 従って、3m位離れたところからテレビ画面を見ると少々ぼやけて見えます。自動車を運転する場合も前方の視野のピントが合っていないのが判りました。その為に、小生の場合遠距離用に「‐1.0D」の眼鏡処方箋が出され、外出時や離れてテレビを見る時には、それに従って作ったメガネをかけることにしています。外出時は特に眩しく感じることがありましたので、調光レンズといって紫外線の量に応じてメガネの色が黒くなり紫外線を自動的に遮断するレンズを選び、非常に具合がよいと感じています。値段もそれほど高くはありません。但し、自動車を運転していてトンネルに入る時などは瞬時にはメガネの色が変わりませんので注意する必要があります。

 この他に、読書する時とかパソコンに向かう時用の近距離焦点「+1.0D」のメガネを使うと更に細かい文字が見やすいと担当医に勧められました。「+1.0D」というのは最も度が小さいレンズなので、100円ショップで売っている既製のものでよいそうでしたので、助かりました。 この方がより高価な遠近両用のメガネを作るより良いだろうとの担当医のお勧めでした。

年齢とともに注意しなければならない眼の病気

 たまたま平成20年の秋、千葉市政だよりに近くの公民館でOs眼科医による掲題のような講演会があると載っていましたので、眼の手術をした後でもあったので、興味を覚えて出席してみました。
 
 その概要を以下に纏めてみましたのでご参考になれば幸いです。
自覚症状なしに進行する重篤な病気があるので、眼科医の定期診断が肝要で
あるというお話でした。

 眼に関する常識 (近視、遠視、乱視、老眼、その他))

    1. 近視とは ・・・ 近くにピントがあった眼で、通常加齢とともにこの傾向になる

    2. 遠視とは ・・・ どこにもピントのあっていない眼で、網膜の遥か奥の方(内側)に焦点が来ている

    3. 乱視とは ・・・ ラグビー・ボールのような状態でものがゆがんでみえる眼

    4. 老眼とは ・・・ 調節力が無くなった眼で、20代からこの傾向が始まります

    5. 眼の使い過ぎと眼の病気 ・・・
       眼の使い過ぎで眼の病気になることはない。 
       但し、長く使っていると眼が疲れるので、適当に休ませる必要がある

    6. パソコンに長い間向っていると ・・・
       通常、眼は何秒間に1度ずつ瞬きをして、涙を出して眼の表面の潤いを保つように働いています
       パソコンの画面を長いこと見つめていると瞬きが行われないので、眼が乾いてくるので、
       時々休んで眼が乾かないように気を付ける必要がある。

 白内障(しろそこひ)

 加齢と共に誰でも大なり小なり掛かるもので、以下のような症状が現れます。

    * 視力低下(メガネをかけても見づらくなる)
    * ぼやーとする(自動車の運転に危ない)
    * うっとうしい
    * 2重にみえる
    * 明るいところがまぶしい(昼盲という) ・・・ 眼球の中で乱反射するので → ひどくなると見えなくなる

 白内障の治療法は:

    * 薬は余りメリットがない(処方する眼科医もあるがこれは時間とお金の無駄である) 
    * 濁ってきた眼球を手術して人工のレンズに替えるしか方法はない
       但し、これは若返りの手術ではない(ショボショボ感は残る)
           術後はメガネが必要(近距離用と遠距離用の2種類)
           多焦点眼内レンズが開発されてはいるが、まだ高価(100万円位)で一般的に普及はしていない

 緑内障

 次に加齢とともに気をつけなければならない眼の病気はこの緑内障で、その特徴は:

    * 自覚症状がない、症状の後期でも自覚できないで、突然失明する(失明率No.1)
    * 70才代では4人に1人の割合で罹る
    * 神経線維が死んでしまう病態
    * 徐々に視野が欠けて行ってしまう(しかし自分では気づかない)
    * 回復する治療はなく、現状維持する治療しかない
    * 一番の増悪因子は眼圧が高くなることで、それを下げるしか方法はない
       眼の中を房水と称する液体が循環していて、何らかの理由で房水の排出が行われなくなると、
       眼圧が高くなり、その結果視神経の集まる網膜上の乳頭という箇所の機能不全が起こり、
       見たものの情報が脳に正確に伝達されなくなる病気です
    * 検査は眼底検査で眼圧が上がっていないことを確かめる、症状の経過は視野検査で測る
    * 最近、正常眼圧緑内障という緑内障も出てきて、眼底検査だけでは発見されないものもあるので
       要注意です。 これは、別の原因で視神経が弱ってくる病気です。厄介ですね。


 加齢黄斑変性症

 次に加齢とともに罹りやすい重篤な眼の病気がこの加齢黄斑変性症で、その特徴は:

    * 年齢とともに黄斑部がやられてしまう病気
       黄斑部とは見た映像を写す網膜の中央にあり、物の形や色を決めるなど視力の制御を司る部所
    * 出血を伴い、それが大きな暗点となり視力の低下がおこる。 何故か両眼同時に罹ることはない
    * 検査方法は、造影剤による検査とOCTによって網膜の状況を検査する方法があります
    * 治療法は現状を維持するだけで、回復させる治療法は今のところありません。
    * 日本人で約1%、外人で5〜8%の罹病率。年齢・喫煙・家族歴等が関与していると言われている

 その他の眼の病気

    * 糖尿病網膜症 ・・・自覚症状がなく、症状が出たら末期、失明の危険はない、定期的検査が必要
                   レーザーで病んだ網膜の部分を焼いてしまうのが唯一の治療法
    * 静脈分岐閉塞と中心静脈閉塞 ・・・ 高血圧が原因で網膜に出血したり、むくみが出る、レーザー治療
    * 眼底出血 ・・・ 高血圧により静脈がやられ、肩こりが関係
    * 老人性雁瞼下垂 ・・・ 加齢に伴い眼瞼を挙げようとする筋肉がゆるんできて、顎を上げないと見づらく
                      なる、 肩こりなど眼と関係ない症状が出てくる
    * 球結膜下出血 ・・・ 出血するが病気ではない、うつることもないが治療が必要
    * 飛症・網膜剥離 ・・・ 硝子体が濁ってくる症状で病気ではない、急に増えると網膜剥離や出血の
                       可能性があるので、眼科で治療を受ける必要がある


                                             平成21年2月初旬 長兵衛記