(5)レイヤーの利用に就いて

 水彩7では、レイヤーと呼ぶ層を複数重ねて、キャンバスに最終的に合成画像として画像を表現します。

 レイヤーとは言ってみれば透明なプラスティックに描かれた画像のようなもので、透明な部分を通して下層の画像が透けて見られるので、結果的に前面に出したい画像は一番前面の(一番上の)レイヤーに配置し、そうでない背景的な画像はより背後の(より下層の)レイヤーに配置することによって、その画像全体が立体的に見える効果を出すことが出来ます。レイヤーの概念は一般的にビットマップの画像処理ソフトウェアで広く採用されていますが、この水彩7を使うことによって、その効果が明確に体験できます。

 レイヤーの効果の一例として、この長兵衛のWebサイトのトップ頁を注意深くご覧戴くとお気づきになると思いますが、そのトップ頁で「たそがれ長兵衛」がとぼとぼと八ヶ岳山麓を歩いていきます。ところがその前面に日光キスゲの花が咲いており、長兵衛はその日光キスゲの向こう側をチャント歩いてゆくのが見て取れます。これはまさしく日光キスゲのレイヤーが長兵衛の歩くレイヤーのより前面に配置され、更に背後の山並みは長兵衛の歩くレイヤーのより下層のレイヤーに置かれているためのレイヤー効果が出ている例です。

 レイヤー・ウィンドウはレイヤーの状況を示すものであることは既に第2章で述べた通りです。右の図は長兵衛が描いた「アルプスのアイガー北壁」の完成時点のレイヤーの構成状況を示すものです。

 一番上段に文字レイヤーが固定的に配置され、書かれた文字は必ず見えるように考慮されています。

 その下に絵画レイヤーが続きますが、これはユーザーの都合で最大15枚まで追加できます。

 更に最下層に背景レイヤーがこれも固定的に配置されています。このレーヤーはデジカメなどで撮った写真を元絵にして、トレース機能を使って下絵を描く場合にのみ、このレーヤーに読み込まれますが、このレイヤーは透かして参考にするのみで描画はできません。描画全体が完成時点ではこのレーヤーの表示/非表示チェックを外して元絵の影響を無くしておくのが普通です。

 レイヤー・ウィンドウの左端にあるチェック・ボックスはそのレイヤーをキャンバスに表示するか、非表示にするかのチェックを入れるボックスで、勿論チェックを入れるとキャンバスに表示されます。更に、あるレイヤーだけにこのチェックを入れて、その他のレイヤーのチェックを全て外すと、キャンバスにはそのレーヤーに描かれている画像だけが表示されて、そのレイヤーがどのように描かれているか見ることが出来ます。

 右の例で「レイヤー6建物」が青色でハイライトされていますが、これは現在このレイヤーが選択されていることを示し、この時点でキャンバスに何か描き加えると、このレイヤーに描き込まれることになります。従って、このレイヤーの正しい選択なしにキャンバスに何か描き込みますと、それが予想外のレイヤーに書き込まれ、結果的に予想外の表示になります。また、一度描き込んだ部分を後で消しゴムで消そうとしても、その部分の描かれたレイヤーを正しく選択していないと、その部分を消すことが出来ません。

 右の例でレーヤーに名前を付けてありますが、新しいレイヤーを挿入した時点では「レイヤー1」とか「レイヤー2」とかの番号を振られているだけです。例のように番号の横に「建物」とか「空」という内容が判る名前を付け加えておくと、後で修正する場合に非常に便利ですので、この習慣を是非皆様にお勧めします。レイヤーに名前を付けるにはそのレイヤーをダブル・クリックすると、該当レイヤーのプロパティ・ダイヤグラムが表示されますので、その中の名前欄で内容の判る名前を付け加えればよいのです。

 次に、レイヤーの移動に就いて述べます。例えば、上の例で「雲」のレイヤーを選択した状態で、レイヤー移動の矢印のうち上向きの矢印をクリックすると、「雲」のレイヤーが一段上に移動し、「建物」のレイヤーの上に配置されます。この例では、雲と建物がお互いに重なり合っていませんので、効果の影響がありませんが、仮に建物が雲の中にあるような構図でしたら、この移動で効果が違ってきます。

 最後に、レイヤー・ツールに就いて説明します。
ユーザーズ・マニュアルには画面の最下端に表示されるレイヤー・ツールバーを使うように説明してありますが、初心者にとってはツール・ボックスの識別を覚えなくて良い「レイヤー」メニューを使うことをお勧めします。「レイヤー」メニューは画面の最上段のメニュー・バーの丁度中程にあり、それをクリックすると、サブ・メニューがプルダウンで表示され、新規レイヤーレイヤーの複製レイヤーの削除、及びレイヤーの合成といったレイヤーに関する基本的な操作が実行できるようになっています。

 先ず、「新規レイヤー」は新しいレイヤーを挿入する操作です。このサブ・メニューをクリックすると、レイヤー・ウインドウの絵画レイヤーの最上段に新しいレイヤーが追加されます。この後忘れないうちに、レイヤー・プロパティを表示して、内容の判る名前を追加しておくことをお勧めします。

 「レイヤー複製」は文字通りレイヤーの写しを作成し、指定したレイヤーの上に挿入します。勿論、複製する前には、レイヤー・ウィンドウ上でどのレイヤーを複製するか指定しておかなければなりません。この応用は色々ありますが、演習を通じて紹介します。

 「レイヤー削除」は勿論指定したレイヤーを削除することです。レイヤーが増えるとその絵画のメモリー量が大きくなりますので、不要になったレイヤーはさっさと削除するに越したことはありません。この削除とは別にレイヤーのクリアーという操作があります。それはレイヤーそのものはそのまま残して、そのレイヤーに描かれた内容だけをクリアーすることで、これはそのレイヤーに描いたものが気にいらず、そのレイヤーだけを描き直す場合に良くやることです。 レイヤーのクリアーはレイヤー・ウィンドウ上で当該レイヤーをダブル・クリックすると表示されるレイヤー・プロパティ上にある「クリアー」ボタンをクリックすることで達成されます。

 最後に「レイヤー合成」は現在表示されている全てのレイヤーを指定した一つのレイヤーに合成する操作です。前にも述べましたように、レーヤーの数が増えますとその画像のサイズが格段と大きくなります。従いまして、それまでは別のレイヤーとして別々に描いてきましたが、その部分は一つのレイヤーに統合しても差し支えないという時点でそれまで描いてきた複数のレイヤーを一つのレイヤーに合成することはメモリー・サイズを減らす上で非常に効果があることです。それとは別に、水彩7で作成したファイルをそのまま保存すると 「・・・.sub」という形式のファイルとして保存されます。この形式で保存しておく限りでは水彩7で変更の手を加えられますが、残念ながらこの形式のファイルはHTMLのWebサイトでは認識されません。そこで、出来あがった作品は 一応「・・・.sub」形式で保存しておき、それとは別に、水彩7では「・・・.jpg」形式で保存できるようになっています。その場合は、自動的に全レイヤーの合成が行われて一つのレイヤーに纏められます。